ご挨拶
経済政策学が想定する学問分野は、その長い伝統と同時に近年の様々な分野の発展により、アカデミックな意味での経済学の範囲を超えて広がっております。具体的には、哲学や倫理学を含む政策思想にかかわる分野から政治的なプロセスを含む政策決定プロセスの考察などその対象とする範囲の拡大とともに、分析方法についても従来の経済学における理論分析や計量経済学を用いた実証分析に加え、社会学、教育学や政治学といった分野における分析手法や、近年のデータ・サイエンスと呼ばれる分野で開発が進んだ機会学習なども有力な分析道具となっています。また経済政策に携わる主体についても従来の経済学が想定する家計や企業、政府といった主体に加え、非営利組織の役割も注目されています。このように、経済政策学を研究対象とする本学会においても大学に所属する研究者だけでなく政治・行政、NPO・NGOや民間企業の実務家との意見の交換などがますます重要となっているのが現状です。
現在、本学会では、毎年、全国大会と国際会議を開催し、研究者の交流の場を設けております。また学会誌として2003年より『経済政策ジャーナル』を刊行、また2006年からは英文誌International Journal of Economic Policy Studies (IJEPS)を発行しております。International Journal of Economic Policy Studiesは、現在Springer社より発行されており、国際的なランキングも獲得している雑誌となっております。さらにこの二つの学会誌に掲載された論文よりより優秀な論文について論文賞・研究奨励賞といった学会賞を授与し表彰するという活動も行っております。地域に密着した活動としては、関東・中部・関西および西日本の部会を設け、各部会で部会大会やその他の活動を行うことによって、より地域に密着した研究活動に対するサポートを行っております。これらの活動は、特に若手の研究者や大学院生にとって多くの先輩研究者と交流する機会となり、研究の遂行や国際的な研究活動への足掛かりとなると考えております。
私は、2022年5月に日本経済政策学会会長に選出されました。日本経済政策学会は1940年に設立され、会長としては、1986年に初代会長に就任された加藤寛先生より数えて第15代ということになります。本学会は長い歴史と伝統を持った学会であり、その活動を通じて数多くの研究成果を蓄積して来ました。私の会長任期においても、様々な研究者による活発な活動を推進し、より多くの研究成果を追加できるよう、微力ではありますが尽力するつもりです。また会員の皆様には、学会のさらなる発展に向けてお力添えをお願いする次第です、よろしくお願いいたします。
日本経済政策学会
会長 福重 元嗣